はじめに
「ほんとにあった!呪いのビデオ16」です。監督が福田陽平氏に変わります。凝った演出はなく、淡々と進んでいく印象がありますが、現在まで続く本呪のカラーというか、演出のテンプレが確立していった感があります。福田氏は21巻まで担当し、後に71巻から復帰、最近の80巻まで再び担当し、長く本呪に関わることになります。
卒業旅行(すこし怖い)
概要
卒業旅行に沖縄を訪れる、投稿者たち若者グループ。断崖絶壁の観光名所での映像で、飛び降り自殺の瞬間の様子が写し込まれた。しかしながら、当時メンバーの誰もがそれに気がつくことはなかった。それどころか、居合わせた多数の観光客も、誰一人気がつかず、後に事件として騒がれることもなかった。
飛び降りたあの人物は、この世のものではなかったのだろうか。
感想
過去の投稿映像にも似たようなシチュエーションがありましたよね。「ほんとにあった!呪いのビデオ10」の「落下する霊」です。これも飛び降り自殺の瞬間を捉えたかのような映像でしたが、遠くて人の姿は豆粒のようでした。今回はカメラにかなり近くて、生々しいので恐怖度は高めです。足を踏み出し、勢いをつけて飛び降りている姿は、明らかに強い意志を感じます。
これだけはっきりと写っているので、ひょっとしたら幽霊などではなく、本当の自殺の瞬間かもしれないという、別の意味での怖さも感じられました。もっともこんな人がいっぱいいるような場所と時間を選んで自殺するとは考えにくいですけどね。
引越し先に…(怖くない)
概要
学校を卒業するので、シェアハウスを引っ越す若い男女のグループ。夜になり、引越し先で荷ほどきをする風景の背後の窓に、部屋の中が反射して写っている。そこに一瞬、首吊りをして、ぶら下がっている下半身らしきものが写った。現在この部屋を使っているの女性は、かつては几帳面で綺麗好きだったにもかかわらず、性格が変わったのか、部屋が荒れ放題になってしまった。投稿者は未だにこの映像の存在を、彼女に伝えることができないという。
感想
ほんの一瞬写っていますね。確かにブラーンと何かが、ぶら下がっているようにも見えます。ですが、正直不鮮明ではっきりとはわかりません。異様な感じはしますが、そんなに怖くはありません。
死の予告 前編(怖くない)
概要
製作委員会に、差出人不明の大量の8mmビデオテープが送られてきた。とある男性の生活の様子を、部屋の一点から淡々と撮影し続けたものであり、誰が、なんの目的で送ってきたのかは一切不明である。スタッフがそのテープをチェックしたところ、想像だにしない結末が待ち構えていた。
後編へ
感想
前編は、映像のごく一部が紹介されるだけです。でも、何か不穏な雰囲気があり、嫌な予感しかしません。
体育館に唸る音(怖くない)
概要
高校卒業の思い出を残そうと、体育のバドミントンの授業風景を撮影する投稿者。ビデオカメラのスチル写真機能を使い撮影するが、一人の女子生徒だけはなぜかブレてしまう。そして、その直後の映像には、甲高い謎の音声のような音が記録されていた。スタッフが映像から音声を取り出し、スロー再生にしてみると、「キエロ、キエロ…」と言う声であった。
感想
まず、ブレてしまったのは彼女が動いていただけなのでは、と思います。高いキュルキュルっていう音を、スロー再生すると「キエロ、キエロ…」と聞こえる事象は、「かぐや姫」のライブ版レコードを逆回転すると「私にも聞かせて…」が「私もそこに行きたかった…」と聞こえるという怪談を、思い出させました。恐怖度はそれには及ばないですけど。
ライブハウス(すこし怖い)
概要
バンドの練習をしていたら、突然ドラマーが倒れて気を失ってしまった。その時の映像を確認したところ、倒れる直前、そのドラマーの肩から、真っ赤な腕がだらんと伸びていた。まるで何かに引きずり込もうとしているように…
感想
最初は赤いタオルを肩からかけているのかと思って見逃しました。それほど怖くない、どおってことのない映像ですが、静止画をよく見ると、真っ赤な腕は気持ち悪く、ちょっと怖かったです。
背後に佇む少女(怖くない)
概要
幼稚園の駐車場に落ちていたサッカーボールを見つけた若い男性3人組が、たわむれにこのボールで遊び始める。その一人の背後に女性の人影が…
感想
駐車場なんかでサッカー遊びはやめてほしい。車に当たったらどうすんだよと思いました。
背後に写ったとされる人影は、とても暗くて一瞬なので怖くないです。というか、どう見ても園児には見えないんだけど、幼稚園は関係ないんじゃw
叫び(すこし怖い)
概要
投稿者が当時の彼女と公園でデートの最中の映像に、声のようなものが入り込んでいた。それは、赤ん坊の泣き声のような感じで、しかも「やめて」と聞こえる。
投稿者はその彼女と別れてしまい、連絡がつかないということであったが、スタッフは居場所を突き止め、取材を試みる。インタビューでは、彼女は投稿者と付き合いながら、彼の親友とも付き合っており、妊娠してしまった。二人の友情が壊れることを恐れて、堕胎と別れを決めていたという。
この声は、まだ生まれぬ子供が、母に訴えた悲痛な叫びだったというのだろうか。
感想
なんかドラマにありそうなシチュではありますが、そんな理由で堕ろされる子供は、叫びたくもなるだろうと思いました。「やめて」と言う言葉は聞こえづらかったのですが、赤ん坊の泣き声みたいな声はちょっと怖いです。
誘い(怖くない)
概要
事故が多発する、小さな踏切の監視映像。すれ違う電車の窓にありえない大きさの人影が、反射して写り込む。電車が通り過ぎ、踏切を渡り始める人々。女子高生が何かに蹴つまずき、倒れてしまう。
感想
すれ違う電車の窓に、手前側で踏切が開くのを待っている人たちが、反射して写っています。写っている人は3人ほど。こちらから見て左の2人は座っているように見えますが、おそらく自転車にまたがっていると思われます。そしてそのすぐ右の白い服を着た人物が、左の2人に比べて、2倍くらい大きいのです。
確かに不思議な映像ですが、顔の部分ははっきりせず、性別も伺えません。ただ、遮断機が上がって、人々が渡り始めるの映像になると思いきや、よく見ると、映像をつないで編集しています。つまり、女子高生が転んだのは、電車の窓に人影が写った直後のタイミングではないのです。女子高生の転び方も不自然だし、なにか作為的なものを感じます。
場所は小田急線の踏切なのは間違いありません。おそらく、下北沢から登戸あたりまでのどこかっていう雰囲気ですが、現在では高架化されているので、今後事故の心配はないでしょう。
死の予告 後編(怖い)
概要
比較的若い男性の暮らしぶりが淡々と撮影されている。カメラの位置を調整するシーンがあり、どうやら、カメラはこの男性自身が設置したようである。どうも失業中らしく、バイトか就職の募集に応募するようだ。不採用の電話をもらった時の男性の落胆ぶりが痛々しい。男性はカメラに向かって「死にます」とつぶやくと、鴨居か何かにロープを引っ掛け、今にも首吊り自殺をする体勢となる。
この後。ご覧になる映像は。
実際の自殺現場の映像です。
お子様などには。悪影響を及ぼす可能性が
あるので、絶対に見せないでください。
又、この映像をご覧になった後
不可解な出来事・霊的現象が
起こった場合、その事について
こちらでは、一切の責任を負いかねます
ご了承してください。
ご覧になりますか・・・?
カウントダウン…
さすがに首吊りの瞬間の場面はカットされている。だが、もう既に事切れた男性の遺体がぶら下がっている映像。そこで電話が着信する。当然電話を取るものはいないので、留守番電話に切り替わる。電話の主は「もう知らないから…」とつぶやく。その声は、既にこの世にいないはずの、この男性のものであった。
感想
まず、未視聴の方には首吊りの瞬間や、苦しそうにもがいたりするシーンはないとお伝えしておきます。警告の後の映像は、もう既に事切れた後のものですのでご安心(?)ください。
さて、人が本当に命を、ましてや自ら命を失うシーンなど、痛々しくて見て居られません。なので、これはフェイクだと思いたいですね。フェイクであると仮定して、話したいと思います。
断定はしたくないですが、この人物は少し言語障害っぽい感じが伺え、言葉がたどたどしい気がします。また、話し出す前に咳をする癖があるようです。なので、留守番電話に発せられる声も、まず咳をしてからなんですよね。ここで、視聴者は音質の悪い電話の声でも、これはこの男性の声だと確信できるわけです。このあたりは、うまく作られているなと思いました。
また、悲しいかな、このように喋りがうまくないと、面接で好印象を得ることが現実的には難しいわけで、あまり良い結果にはならないだろうなと、見るものに嫌な予感をさせる演出は見事であると、言わざるをえません。
留守番電話からの声が、この男性のものと判明した時は、それなりの驚きと恐怖はありますが、前振りで大体予想がつくので、それほどではなかったです。
感想まとめ
「死の予告」のショッキングな映像に、他のすべてのエピソードが上書きされてしまいました。このような、弱者に厳しい社会の現状は、現在でも通じるものがあると感じましたが、いかがでしょうか。怖いというよりは、考えさせられるというか、なんだかどんよりする気持ちにさせられてしまいました。
というわけで、私はこの巻、あんまり好きじゃありません。
というわけで、これ以上どんよりしないために、今回の記事のアイキャッチ画像は、わいのイッヌ(モカ)の可愛い画像にしますw
コメント
いつも楽しく拝見させていただいています。
16巻を見て気付いたのですが、「引っ越し先」と「死の予告」の2つのエピソードは繋がっているのではないかと思います。
「引っ越し先」で現れた男の下半身と「死の予告」の男の格好と一致していたり、「引っ越し先」の女性が咳をした瞬間死体が現れ、「死の予告」の男は死ぬ間際に咳をしていた。あと極め付けは部屋のとても構造が似ている気がするのですが…どうなんでしょう…
黒swさん、コメントありがとうございます。
>「引っ越し先」と「死の予告」の2つのエピソードは繋がっているのではないかと思います
ちょ、ちょっ、ちょっと待ってください。もしそうだとしたら大変興味深いです。今日はもう夜遅くて怖いので(笑)、明日確認します!
先ほど見てきました。大変興味深い考察ですが、残念ながら「引っ越し先」と「死の予告」の部屋はちょっと異なるようです。
「引っ越し先」の部屋は1階の和室で床は畳、窓の上に小さな小窓(天窓?)があります。一方、「死の予告」の部屋は洋室、おそらく2階以上で、床はフローリング、窓上に小窓はありません。また、「引っ越し先」の部屋の入り口左には冷蔵庫がありますが、「死の予告」の部屋はこの位置に梁が出ています。
ただ、部屋の大まかな構造、女性が咳をした次のシーンで映り込む足、男の下半身の黒っぽいズボン、そしてぶら下がった雰囲気といった符合点があり、ひょっとしたら制作側も、この2つのエピソードの繋がりを意識して作っているのでは、と感じられて、この巻の解釈に深みが増した気がします。
黒swさんの着眼点はさすがだと思います。
返信ありがとうございます。
私は何処かのレビューサイトで16巻にはある仕掛けがあるとか読み、気になったのでもう一度見直して見たら…あんなことに気付きまして(見間違いかもしれませんが)いつも愛読させて貰っているブログ様にコメントさせて貰った所存でございます。
なんかこんな感じの敢えて触れていない箇所を見つけると二度おいしいといいますかこう言うのもほん呪の醍醐味なんだなと思います。
>愛読させて貰っているブログ様にコメントさせて貰った所存でございます。
勿体無いお言葉ありがとうございます。
>なんかこんな感じの敢えて触れていない箇所を見つけると二度おいしいといいますかこう言うのもほん呪の醍醐味なんだなと思います。
全くもって同感です。黒swさんのおかげでこの巻も二度楽しめました!