はじめに
「心霊玉手匣 3」のレビューです。前作はナンバリングが「其の2」ってなっていたのに、今回は「其の3」ではなく、ただの算用数字で「3」。これはどゆこと?
また今作は前作、前々作とかなり演出や構成が異なっています。もう「ほん呪」的フォーマットは影も形もなくなり、一つの物語で展開してゆく心霊ドラマとなっています。というか「チーム玉手匣」の面々も、最後の方にちょろっとしか出てきません。
序章
概要
割と新し目の大規模廃墟に、男性の若者2人組が肝試しに向かう。彼らは「講堂」という広めの部屋で、女性と思しき幽霊に出会ってしまう。施設から逃げ出した彼らは車に戻るが、その車にも幽霊が乗っていたため、パニックになりその場から逃げまどう。
感想
講堂の幽霊はちょっと怖いレベル。車に戻った時、止めたはずのエンジンがかかったままなのですが、最近の車はエンジン音が静かすぎてわかりにくいですね。車内の幽霊は合成臭さが際立って、ちょっと白けてしまいます。逃げ惑う演技はリアルでよかったのですが、この後どうやって帰ったのでしょうか。
覚醒
概要
場面は変わって別の男性とその恋人が、都会の川辺の夜景を楽しんでいる。アクセルとブレーキ踏み間違えて、危うくコンビニ突っ込んでしまいそうになったり、「左折する〜」とか言いながら右折したりと、友人のおバカな話で盛り上がっている。持参したビデオカメラで互いを撮り合っていると、突然男性が頭を抱えて苦しみだしてしまう。その際の映像には意味不明の別の映像がインサートされていた。
踏切付近を歩く視線。踏切が閉まっているのにこちらに渡ってくる男性。その真っ黒な眼窩と白く睨む目の男性がこちらに迫ってくる。
感想
運転が下手くそな友人の話が面白かったですね。ただ、運転マナーが問題になっている昨今では笑えない話でもあったり。
目前に迫ってくる幽霊の姿もはっきりし過ぎて怖くないんですが、この辺はもう割り切った絵作りで、わかりやすさ重視なんですかね。
視界
概要
バーで飲む2人。1人は岡崎さん、先ほどの彼である。もう1人は運転のへたくそな親友の金田さんであった。岡崎さんはこの時の状況を金田さんに説明している。彼によると、激しい頭痛の際に自分の目線ではない誰かの視点の映像が、ビジョンとして頭に入ってきたと言う。この時の映像が同時に撮影していたビデオカメラに記録されたのだそうだ。
あの映像の数日後にも、同じように激しい頭痛が彼を襲い、「今カメラを回せば、頭に入ってきた映像を記録できるのでは」と、自宅のビデオカメラのスイッチを入れる。そこに記録された映像は、田舎のどこかの駅へ向かう視点。ホームのベンチには女性が3人写っており、こちらを振り向く白目をむいた顔は、3人とも同じものであった。鋭い女性の悲鳴で映像は終わる。
この映像を金田さんに見せた岡崎さんは、自分に他人の視点をビデオカメラに念写する能力に目覚めたと分析していた。この時点では「なんかすごい能力に目覚めちゃった俺」と言う感じで、何者かが幽霊を見ている状況が見えていると解釈していた彼は、「この能力で金儲けもできるんじゃねえの?」とか、「某ビデオ制作会社に売り込めば映像1本で10万くれるらしい」などど、この時点では終始軽いノリであった。
感想
運転の下手くそな金田さん登場(笑)。それはともかく「金儲けもできるんじゃねえの?」と言うノリには苦笑してしまいます。写り込んだ映像は心霊特番の再現映像レベルで、割り切り過ぎ。
あと駅名標のぼかしが甘くて場所がわかっちゃいました。JR青梅線の二俣尾駅、踏切は近くの石神沢踏切ですね。雰囲気はなかなかです。
病気
概要
金田さんが借りてきた「心霊玉手匣 其の二」を視聴している間に、岡崎さんにまた、あのビジョンが入り込む現象が発生した。今回の映像は自然の風景やビル街、廃墟、川面、首吊りロープなどの脈絡のないもの。だがこの映像を念写する際の肉体的負担はかなりのものであるようで、頭の中にはその視点の主の感情も入ってきたという。この人物はおそらく女性で、霊の存在を頻繁に認識してしまう状況に絶望を感じてしまい、自殺したいと願っているようだ。だが、どこの誰かもわからない人物にどうすることもできない。
岡崎さんはこの現象が頻発するようになって、肉体的にも精神的にも疲弊が激しく、夜も眠れない状態が続き、苦悩していた。恋人の電話にも出ず、バイトもやめてしまう。心配になった金田さんは岡崎さんの様子を見に行く。だが自暴自棄になってしまった彼の部屋は荒れ放題で、部屋の真ん中で灯りもつけずぼうっとしているばかり。言動もおかしくなり、包丁を取り出し自殺するような仕草も。その際の映像に岡崎さんの顔が割れて中から女が顔を出すような姿まで映し出されていた。金田さんは映像に映る手がかりから、その女の所在を突き止めることしか、この状況を打開するしか方法はないと思い、この女を探すことを彼に提案する。
岡崎さんは急に冷静になり、金田さんの提案を受け入れる。
感想
不安を払拭するためか、岡崎さんの部屋で金田さんとパンツ一丁になって踊りまくるシーンは、果たして必要でしたかね?
あと、岡崎さんの彼女に彼の様子を見に行って欲しいと頼まれるシーンで、いつもビデオカメラ持っているなと指摘されて、「俺ホームビデオ大好きだし」という発言があまりにも取ってつけたような感じがしました。今回は岩澤が撮影しているわけではないので、この発言がないと、いつもビデオが回っている状況が不自然ですからね。
女を探すことを提案されて、「まずはレンタカーだな」といきなり冷静になり、スタスタ歩き出す岡崎さんに向かって、金田さんが「その前に顔洗ってこい」「あとビニール袋も外せ」と散々暴れまくって、足にコンビニ袋が絡まったままの姿を指摘するシーンが笑いを誘います(笑)。
ただ、友人を思う金田さんの気持ちはよく伝わってきました。
ちなみに私も頭痛持ちなので、見ているだけで頭が痛くなってきます。
追跡
概要
映像に映っていた駅や踏切を訪れる2人だが、特に得るものはない。周辺に聞き込みをするも、変な女と言うだけの、漠然とした情報では何もわからなかった。ただ踏切には花が添えられており、何かの悲劇があったことは確かのようだ。
夜になって岡崎さんにまたビジョンが流れ込んでくる。それはあの踏切の光景であったため、近くにあの女がいると感じた2人はその場所に車を飛ばす。そこには誰もいなかったが、再度流れ込んできた映像から、途中通行人を巻き込みながらも、近くにある比較的大規模な廃墟を突き止めた。散発的に映り込む映像から廃墟内でその女を追跡し、とうとう「講堂」と書かれた広い部屋にたどり着く。
だがそこには何もなく、あの女もいない。度重なる異常な現象に精神も病んでしまったような岡崎さんは、支離滅裂な言葉を叫び続けるばかり。「いつものお前に戻ってくれ!」と叫びかけることしかできない金田さんであった。
感想
問題の場所に向かう車の中で、疲れ切った表情の岡崎さんが「アクセルとブレーキ間違えるなよ」とボソッと言うのに笑いました。「覚醒」の彼女との会話が伏線になっています(笑)。
橋の上で人違いでおっさんを押し倒したり、講堂で「鬼さんこちら」を歌いまくったりと常軌を逸した岡崎さんの行動にかなり引いてしまいます。
死角
概要
岡崎さんが叫び続けている中、男性4人、女性2人のグループがこの廃墟を訪れてくる。この肝試しグループの男性は、「序章」で幽霊を見たあの2人であった。あんな怖い目にあったのに懲りもせず再び訪れるとか、なんともチャレンジャーだが、女の子を怖がらせたいという下心が勝ってしまったのであろうか。
そんな折、岡崎さんの叫び声を聞きつけた彼らは、例の講堂に勢い勇んで駆けつける。だが、何者かのビジョンを恐れて攻撃的になっている岡崎さんは、その一行の女性に掴みかかろうとする。女性たちを守るため岡崎さんをぶん殴った男性を金田さんが床に押さえつけると言う場面もあるが、いち早く冷静になった金田さんが、事情を説明してその場を収める。
一行の男性に「ここは心霊スポット」「ここで3ヶ月前に女が自殺した」「先日もここで幽霊を見た」という説明を受ける。自分が見たビジョンは、もう既に死んでいる女性のものかもしれないことが判明して、愕然とする岡崎さんであった。
彼らが去ってからすぐに、またあのビジョンが岡崎さんを襲う。その映像は傍のカメラにも記録されており、それはこの部屋で頭痛に苦しんでいる岡崎さんの姿であった。そう、あの映像が幽霊のものであるなら、いまこの部屋にあの女の幽霊がいることになるではないか。ビジョンではなく、生のカメラ映像も講堂の真ん中に佇む幽霊を一瞬捉える。目に見えぬ幽霊に向かって殴りかかる仕草をするしかない岡崎さん。首を吊り、こちらを睨む女の姿で映像は終わる。
あれは自殺した女の残留思念なのか。彼らは諦めたような表情で帰途につく。この映像を売れば当座の生活の足しににはなるだろう。この先のことは「何も考えたくはない」と語り、疲れ切った岡崎さんは最後に「ありがとな」と協力してくれた金田さんに声をかける。
感想
デッキブラシでカンフーの真似ごとをする岡崎さんや、ぶん殴られた彼を見て「岡崎のかたきぃ!」と摑みかかる金田さんの寸劇は、ハマれば爆笑レベルのギャグになってしまっています。
ただ、ここで「序章」の登場人物が現れ、話が繋がっていく演出は面白かったです。肝心の恐怖映像も、雰囲気は悪くないものでした。あのビジョンが霊のものだとわかって、諦めたように悟ってしまった岡崎さんが、「ありがとうな」と友人をねぎらうセリフもよかったです。
終章
概要
場面は変わり、「チーム玉手匣」事務所前にしゃがみこむ岡崎さんの姿を監視カメラが捉えていた。
事務所内では「チーム玉手匣」の面々、上園、唐沢、モロちゃんこと両角の姿がある。両角の両親に連絡を取った際に仕入れた彼女の本名を、「とっておきの情報」としてその場で暴露してしまった上園に憤慨した彼女は「帰る」と怒って部屋を出て行ってしまう。そして事務所の玄関でモロちゃんと岡崎さんは遭遇することになる。
事情を説明する岡崎さんの話を真剣に聞いてあげる両角。霊能力のある彼女に対して岡崎さんは「辛くないのか」と問いかける。彼女は「辛いこともあるが、良いこともあると」静かに答えるのだった。すると突然またあのビジョンが岡崎さんを襲う。今度は川辺の風景である。「今度は別のが見える」、「何かが起こっているんだろ!お前らに!」。岡崎さんはそう叫んで苦しがる。モロちゃんは事務所の上園らに助けを求めるため、彼をエレベーターにかつぎこむ。その川辺の映像には、こちらを覗き込むような、不気味な男の顔があった。
感想
ここでモロちゃんの本名が判明。唐沢の「まりあちゃんかわいいな」に対して「おめ、黙ってろ!」一喝するモロちゃん。そりゃデートクラブのキャストだった頃は「かわさわくぅん」とか言ってたんだから気恥ずかしいわな。この時点では下の名前「まりあ」しかわかりませんが、のちのスタッフロールで「新平真里亜」だとわかります。役名=芸名のようですね。
2020年11月27日追記
第5巻にあたる「constellation」を観て、役名は異なることが分かりました。
口は超絶悪いが、実は優しいモロちゃんは岡崎さんの話を真剣に聞いてあげます。そこで、岡崎さんに今までとは全く別のビジョンが見え出して、「終章」は次作のエピローグになっていることがわかります。そう、事務所には岩澤がいないのです(わざわざ、撮影:上園貴弘とテロップが出ています)。
感想まとめ
茶番感は際立ちますが、金田さんの岡崎さんに対する友情、岡崎さんの能力者ゆえの苦悩、それにどこか共感するモロちゃん、全体的にスピーディーな展開、そして時折差し込まれるギャグでなかなか楽しめました。同時にレンタルした、「心霊玉手匣4」をすぐに視聴してしまうほど、先の展開が知りたくなりましたから。
ただ、「怖さ」に関しては全く感じません。これは心霊シーンをわかりやすくはっきり見せていることに起因するのかと思います。多少わかりにくくて良いので、もう少し怖い感じを出して欲しかったと思います。
コメント