はじめに
「闇動画14」のレビューです。この巻は割と評判の良い「死の円環」が収められていますが、他の2エピソードも結構面白かったですね。
義母の家(少し怖い)
概要
撮影者の夫の実家はマンションに建て替えられ、その最上階にはかつて彼の母親が住んでいたという。
どうやら母親は最近亡くなっているらしく、夫婦はこのマンションを相続して暮らし始めたばかりのようだ。だがここでは呼び鈴が押されても誰もいなかったり、蛇口の水が勝手に出たり、ベランダにカラスが激突して血を流して死んでいたり、と心霊現象が多発する。妻は生前に仲の悪かった義母の霊が自分に嫌がらせをしていると感じ、この部屋からの退去を訴えるが、夫は信じてくれない。
挙句の果てにはお湯を貯めたばかりの浴槽に、白髪の混じった長い髪の毛が浮かぶに及んで、我慢の限界に来た妻の様子から、夫はしぶしぶ翌日に退去することを決断する。
翌日、病院から帰ったばかりの妻が、電話で念願の懐妊の報告を実の母に行った直後、ガラスの花瓶が割れたり、何者かに首を締めあげられたり、挙句の果てには死んだはずの義母の声がしたりと激しい心霊現象に見舞われてしまう。
「お前の子供などいらない」その声に妻が振り向くと…
感想
映像を見せられても夫の反応は鈍く、現象を認めようとしません。折角破格の条件で住むことができるようになった広い家なのに、勿体ないという気持ちはわかります。でも心霊現象に対する苦しい理由づけをしてまで認めようとしないその態度に、イラっとする妻の気持ちが良くわかる演出でした。義母の嫌がらせを信じない夫への不信感と恐怖は如何ほどのものでしょうか。それが心霊現象となれば、想像するに余りあります。
結局懐妊が分かったとたんに、霊の嫌がらせは凶暴化してしまうのですが、「お前の子供などいらない」の後に出てくる義母の幽霊は、ちょっと化け物じみすぎているような感じがします。それは僕の感じ方ですが、結構怖いと感じる人もいるでしょう。
ところでこの家、ちょっとマンションに見えないのが「ん?」と思いました。だって階段があって2階があるみたいだし(メゾネットタイプ?)、ベランダも3階建てくらいの高さだし、もしこれがマンションではなく一軒家だとしたら、実家をマンションに建て替えして、さらに取り壊して家を建てたの?と思いました。
友人の結婚(怖い)
概要
撮影者トシは結婚を控えた友人、ヤスの部屋をアポなし訪問する。
トシは何かを企んでいるようで、眼鏡型ビデオカメラで終始撮影をしていた。ヤスは突然の訪問に驚いた様子で、慌てて部屋片づけてトシを向かい入れる。部屋でヤスと飲み明かすトシだが、1時間ほどして彼へ暴露話を始める。実はヤスの結婚相手であるケイコと自分は、つい最近まで付き合っており、ヤスの実家が裕福であることで、彼女が突然ヤスに乗り換えた事、ヤスとケイコの交際期間と時期が被っており、ケイコのお腹の子は自分の子である可能性があることを暴露。そのためヤスへの嫉妬、ケイコへの恨みから、この映像をお前の結婚式でぶちまけるつもりだ、と半泣きで心情を吐露する。
その時、突然ケイコからトシに電話がかかってくる。だがケイコは無言で、電話口からはノイズ音が流れるばかりであった。
だが、それを聞いたヤスはしばらく無言の後、自分は実はゲイで、ずっと前からトシが好きだったと告白するのである。ケイコとの結婚で普通に戻れるかとも思ったが耐え切れなかった、と自分への思いを綴ったポエムブログを見せられ、危険を感じたトシはその場から逃げ出そうとする。
トシの行く手を遮ったヤスは、包丁片手に自分との心中を要求する。トシは慌ててユニットバス付きトイレに逃げ込むが、ヤスは、「この話はケイコにもした」「結婚を解消しようとしたが、暴れ出して慰謝料を要求されて揉めてしまった」、などど、自分のよりもっと驚きの事実を吐露される。
「俺は終わりだ」
「ケイコもそこにいるから……」
「え……?」
感想
細かい伏線が面白かったです。
まずヤスが部屋を片付けると言って10分ほど待たせたこと。あれの後片付けをしたのでしょう。「眼鏡替えた?」はトシがいつもとは異なる眼鏡をしていたから。たぶん眼鏡型カメラだったのでしょうし、さらにトシが好きなヤスは彼のわずかな変化に気が付いたと言うことでしょうね。そして、ケイコからの電話にヤスは「は?」とか言って、ちょっと不思議そうな顔をしていました。まあ、彼女は風呂場にいますからねえ。
話が、トシの復讐劇から斜め上の路線に変化してしまうのに意表を突かれました。
また、ケイコさんなんですが、意外とリアルな感じがします。こういう時のあれって大体造形がお化け屋敷レベルなんですが、今回はリアルでしたね。おまえそんなもの見たことないだろ、言われると思われるでしょうけど、見たことなくてもそれっぽいという感じでリアルです。
結局、トシはヤスに襲われるわけですが、その最中画角の隅でケイコさんのうつろな瞳が、常にこっちを向いているのが、怖くて気持ち悪かったですね。
死の円環(怖い)
概要
山田、氷川、そしてゴーグルタイプのウェアラブルカメラで撮影する真壁の3人で、廃校らしき心霊スポットを訪れる。
廃校に着く直前人を撥ねた感覚があった氷川が、急ブレーキで車を停めるのだが、車の周りには誰もいなかった。何か動物を撥ねたのだろうという事になり、気を取り直して彼らは目的地に向かう。廃校に入る前に、タバコを一服吸っていた氷川が2階のベランダを指差し「人がいる」呟くが、懐中電灯の先には既に誰もいない。
3人は恐る恐る廃校の中に入り、ある教室で黒板に描かれた「死の円環ゲーム」という板書を発見する。
☆死の円環げーむ☆
連絡事項はこのちょーくで!
げーむに関係ない人や物は
どんどん消えていくから注意してね
これは17回目
真壁
最後に撮影者の苗字が描かれている。「これは17回目」の数字部分は、何度も消しては書き足した様子が伺える。「真壁」の文字から他の2人は彼の仕込みを疑うが、真壁が心霊スポット探検に誘われたのは今日なので、そんなことはあり得ない。
他の部屋を探検していると、氷川が「誰かいる」と部屋を飛び出してしまう。階段の踊り場には真壁のものと瓜二つのキーホルダーが落ちていた。互いが互いの仕込みを疑う中、氷川が再び「誰かいる」と何者かを追いかけ、残された2人は彼を見失う。
山田を車の傍に残して、氷川を探しに建物内を一人で探索する真壁は、階段の踊り場で死んでいる彼を発見する。思いがけない事態に、ストレスから戻してしまう真壁。
一息つくと表から人の声がする。ベランダから覗いてみると、自分達3人が車で到着した様子だった。そして彼らは自分が経験した、先程と全く同じ会話をしているではないか。そして氷川が真壁を見つけ「誰かいる」と呟いている。あのとき氷川が見たものは、自分だったのだと彼は気づく。
自分を残し、時間が巻き戻ってしまったのか、「円環」とは何か。自分を見つけ追いかけてくる氷川から逃げ惑う真壁。その後彼らを襲う運命とは………。
感想(ネタバレあり)
面白かった!
所謂ループものですね。尚、真壁以外の苗字の漢字は、エピソード中で明かされないので私の推測です(まあ山田は山田でしょうけどw)。
真壁の視点で次々に起こる事象はスピーディーで飽きさせません。特に氷川が見つけて追いかけていた人物が、真壁自身だったと分かってからが面白く、わくわくして観ていました。
ここでネタばらしをすると、最終的に真壁は車に撥ねられて、その車が廃校にやってきた自分らの車であることが解ります。ですが、ここで彼ら(真壁たち)は撥ねられた真壁を見つけることができません。見つけたら「円環」はそこで終わってしまいますし、前の世界線では見つけることができていないので当然なのですが、カメラの位置からそれはあり得ないだろうと思ってしまいました。でもあれですね、「ゲームに関係ない人や物はどんどん消えていく」ってことで、真壁の死で18回目の彼は20回目の彼らからは消えてしまったという事なのでしょうかね。
時系列を整理すると、
- 18回目の真壁達、廃校に到着
- 18回目の氷川、17回目の真壁を発見する
- 18回目の氷川、17回目の真壁に殺される
- 18回目の真壁、19回目の車と自分らをベランダから見る
- 18回目の真壁、19回目の氷川を殺す
- 18回目の真壁、19回目の山田を殺す
- 18回目の真壁、20回目の自分らの車に撥ねられる
という事は18回目の真壁たちの車が撥ねたのは16回目の真壁なんですかね。
18回目のループが完了する前に19回目の車が到着するので、よくわからなくなってきましたが、まあ面白かったです。
感想まとめ
今回も3エピソードともに面白かったですね。特に最後の「死の円環」は謎解き要素も絡み合って良かったです。考察を重ねるごとに新たな発見がありそう。
ただこのシリーズ、初期とはずいぶん雰囲気が変わりました。今回は映像の出どころの説明や映像提供者へのインタビューなどが一切なく、どちらかと言うとドラマっぽくて、心霊投稿モノではなくなってきています。まあ、面白ければよいのですが。
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本ページの情報は2022年3月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。
コメント
死の円環ゲームにて真壁たちが乗っていた車はトヨタ・アイシスですね。随分前に女優の小雪さんや唐沢寿明さんがcmでやってたファミリーカーです。最近はウイッシュの姉妹車として若者にも普及しているそうですね。毎度車豆知識でした。後、氷川役の人は竹田貴士っていう方で検索すれば出てきます。
氷川がいた(笑)。
後ヤスの携帯のアイフォンケース、トイ・ストーリーのエイリアンで思わず笑っちゃったw 自分お気に入りで、グッズも買ってるんでw
可愛いですよね
ただ、一つ疑問なのが、トシに電話をかけたケイコはすでに○されていたんですよね?じゃああのとき電話をかけたのは一体。
以前ちょこっと書かせていただきましたが、死の円環は伏線の回収やらが秀逸で短編映画を観ているような楽しさがあって闇動画シリーズの中でも一番のお気に入りです。
あと友人の結婚で出てくるヤスのサイコっぷり(と撮影者のクズっぷり)も良い感じですね。
定期的に観たくなる様な一本です。
なぜかfdさんへの返信になってしまった…orz
申し訳ない!!
いえいえ私は別に気にしておりませんので(笑)
いやほんとに面白かったです。
ご紹介ありがとうございます。
なんか「トライアングル」という似たコンセプトの映画があるみたいですね。
ケイコの霊がトシに警告したのではないかと。
ヤスが不思議そうな顔しているのが印象的。「〇したはずなのに……」