はじめに
「ほんとにあった!呪いのビデオ71」のレビューです。ついにこのレビューも70番台に突入し、コンプまでもう一息です。
この卷から監督(演出)が、以前16巻〜21巻まで監督を担当した福田陽平氏と、前年まで別の会社の「ほんとうに映った!監死カメラ」の監督をしていた寺内康太郎氏の連名になります。なぜ連名になったのかはわかりませんが、お互い忙しかったんじゃないですかね。尚、この両名はBSの番組、「ダラケ!お金を払ってでも見たいクイズ」に出演していました。
寺内氏は番組内で「この業界は横のつながりがないので話が聞けて新鮮です」なんて語っていたけれども、福田氏とはこのように連名で監督やってたんだから、何言ってんだ?って感じです。尚、この卷では寺内氏はちょこちょこ顔を出しますが、福田氏は声のみで全く顔を出しません。
さらにみんなのアイドル演出補・寒川ちゃんの初登場です。
タクシー(少し怖い)
概要
初老の個人タクシー運転手が今回の投稿者。防犯目的の車内ドライブレコーダーの映像である。ドライブレコーダーは常に録画を行なっているが、映像の容量が規定に達すると古いものから削除されていく仕組みである。ただし、事故などの状況が想定される、強い衝撃などが検知されると、その前後數十分が別ファイルに保存され、上書き保存されなくなる仕組みである。今回の映像は、事故などは起こっていないのになぜか別ファイルで保存されていた映像であるという。
空車で街を流しているタクシーの車内の様子。空車なので当然乗客はいない。だが、しばらくすると後部座席に髪の長い女性がうっすらと現る。この女性は一旦消えたかと思うと、また姿を現し、しばらくして徐々に消えてしまう。
投稿者によると、この映像が撮れた5分ほど前に路上で手を挙げた人物がいたので、客かと思い車を停めたものの、誰もいなかったという経験をしており、その様子も映像にしっかり記録されていた。
投稿者はこの世ならざる者を乗せてしまったのだろうか。
感想
映像自体は地味ですが、なんというか雰囲気がよく出ていて印象に残るエピソードです。直前に客かと思って、停車後ドアを開けたが誰もいなかった、という逸話もいい感じです。その時の映像も紹介されるのがまた良い。説得力があります。
ただ、写り込んだ幽霊の女性なんですが、後部座席のど真ん中に座っているんですよね。それは不自然でしょ。あそこは3人乗った時に座る場所で、普通は右か左に座りますよね。カメラによく映る場所ということもあって、ちょっと怪しさを感じます。
シルエット(少し怖い)
概要
投稿者の男性が、彼女と飲んだ帰り道に携帯で撮影しながら歩いていると、前方の雑居ビルの屋上に子供の人影のようなものが立っているのを、彼女が発見する。こんな夜中になんで子供が立っているのだろうか。今に飛び降りそうなその人影を恐怖に慄きながらも見つめていると、案の定木の葉のようにその人影は落ちてしまう。恋人の女性はその場にしゃがみこんで半狂乱になってしまうが、その際カメラはまじかに迫ってきている子供の顔、彼女の背後に映り込む男の子の下半身を捉えてしまう。
この彼女はもともと鬱病気味であったが、この事件以来精神に異常をきたし、入院してしまったそうだ。
感想
とにかく暗くてわかりづらいですね。わかったのは鉛筆みたいな人影が落下したこと、彼女の背後に男の子の下半身が立っていたことくらいです。
このエピソードで新演出補・寒川ちゃんが登場しますが、電話かけているだけです。
シリーズ監視カメラ・老人(怖くない)
概要
投稿者が、解体現場にて発見したビデオテープである。その一軒家は賃借人であった男性の老人が行方知れずになってしまい、家財道具ものそのまま。老朽化も激しいので大家の指示で解体することになったのだが、なぜか室内に3箇所も監視カメラが設置されていたという。カメラのモニターができる寝室では糞尿の臭いが充満していた。この老人は家の中を監視し、トイレにも行けないほど怯えていたのであろうか。残されていた監視カメラのビデオテープをなぜか投稿者は見てみたくなり、大家に掛け合って譲ってもらったのだそうだ。
映像では段ボール箱がひとりでに回転して床に落ちてしまうポルターガイスト現象、老人の後を追う女の幽霊の姿が記録されていた。解体後、この地は更地になったが、その地下からいくつかの動物の骨とともに人間の骨も発見されたそうである。
感想
映像自体は怖くありません。ただ、老人がポルターガイストにちょっと怯えていること、墓まで持っていかなければならない何かの惨劇が、ここであったのではないかと想像できる雰囲気が、うっすらと怖いエピソードです。でもちょっと地味。
瑕疵 前編(少し怖い)
概要
2000年に撮影されたホームビデオ。妹夫婦が甥の誕生日の際に姉宅を訪れた際の映像である。映像に写っている幼い少年がその甥であり、現在の投稿者、入間仁さんであった。仁さんはある想いを持ってこの映像を投稿した。だが、彼にとっては残酷な真実が突きつけられることになるとも知らずに。
この映像が取られた年に、仁さんの母親、里美さんは亡くなってしまう。そのため、映像にも登場する、妹の真理絵さんに引き取られたという。里美さんの死は突然で、その原因、死因は今もわかっていないそうだ。仁さんはこのアパートで数々の心霊現象(ポルターガイストや人影)を経験しており、母の死に何か関係があるのでは、と映像を製作委員会に投稿したのだった。
まずここでその映像が紹介される。
妹夫婦の誕生日プレゼントである、「仮面ライダークウガ・ライジングパワーセット」で遊ぶ仁くん。母親の里美さんの背後に不気味な男の姿をカメラは捉えていた。
取材班は仁さんの記憶を頼りに、当時住んでいたアパートを尋ねるが、すでに取り壊され、新しいアパートに変わっていた。そのアパートを管理する不動産屋に尋ね、当時の古いアパートを知るスタッフに話を聞くが、事件事故、心理的瑕疵物件に当たる話は全くないことがわかった。
長野に住む仁さんの育ての親、真理絵さんに話を聞くと、仁くんは不倫相手の間に生まれた子供で、女手1人でかなり苦労して育てていたことがわかる。そして真理絵さんの交友関係から、苦労していた彼女の心の拠り所であった、ある自己啓発セミナーの仲間、Bさんに行き当たる。
感想
母の死の原因を知りたい、という仁さんの一途な想いが伝わりますね。そしてそれが彼にとって残酷な現実を突きつけられるとか、冒頭からバッドエンドであることが示唆される演出は、ちょっと珍しいと思いました。
映像はぶっちゃけよくわかりません。最初はポールハンガーに服がかかっているのかと思いました。男の顔が特にわかりにくく、人の顔に見えないので怖くないです。
停電(かなり怖い)
概要
ほん呪ではよくある、家族で過ごすささやかな娘の誕生日パーティー。電子レンジでも使っていたのか、突然ブレーカーが落ち、真っ暗になってしまう。父親がブレーカーを戻し、灯りが復旧するが、リビングに戻る彼の背後には髪の毛をこれでもかと逆立てた、女のような人影が立っていた。撮影者である妻はこれをカメラ越しにに目撃してしまい、悲鳴をあげてカメラを伏せてしまう。そして「見ちゃった…見ちゃった…」と繰り返し呟くのだった。
撮影した母親は翌朝、原因不明のミミズ腫れが全身に浮かび上がった。
感想
もう本当に、漫画のようにぞわぞわぞわっ〜と、髪の毛が逆立った女性のシルエットが写り込んでます。ここまで逆立つと禍々しくて結構怖いですね。撮影者の「見ちゃった…見ちゃった…」というセリフがリアルで印象に残ります。結構好きなエピソードですね。
かくれんぼ(興味深い)
概要
祖母の七回忌の法事のため、本家に集まる親戚一同。子供達は庭で遊んでおり、それを見守る母親たちの光景。この様子を撮影していた投稿者中里楓さんは、子供達の求めに応じ、かくれんぼの鬼で参加することになる。楓さんが何回か「もういいかい」と呼びかけると、遠くで「もういいよ」と女の子の声がする。だが、振り向くと先ほどまでいた子供達も、親たちも誰もおらず、喧騒から打って変わった静けさに彼女は戸惑いを隠せない。
だが建物の影に女の子が顔を出している。「見つけた」と追いかける楓さんだが、角を曲がっても誰もいない。すると、先の突き当たりを女の子が走り横切った。走り去った先を探すも行き止まりである。そして側の物置のよしずの隙間から、子供の瞳が覗いていた。「ここね」とよしずを外し、中を伺うがやはり誰もいない。このタイミングで、子供達が駆け寄る音が聞こえ、喧騒が元に戻る。楓さんに子供達がかけた言葉は「なんで『もういいよっ』て言ってないのに行っちゃったの?」というものであった。
周りの人々の話では、子供達がまだ隠れていないのに、楓さんが1人で奥に行ってしまったというものであった。親戚一同、子供達も大人たちもその場にいたのである。だが、彼女の携帯には、誰もいない庭で小さな女の子を探している様子しか写ってはいなかった。
感想
なかなか興味深い映像ですね。庭には家の影から覗く女の子以外には人っ子一人いないのです。さっきまで子供達や親たちが10人以上いたのに。異世界に迷い込んだという趣ですが、僕にはこの女の子がこの一族で早逝してしまった親戚の子なのでは、と感じました。あるいは家に住む座敷わらしのような存在だったのかも。いずれにしろ、かくれんぼで遊びたかったのではないでしょうか。
なので、恐怖とか邪悪なものは全く感じられず、「お姉さんに遊んでもらえて良かったね」と声をかけたくなる、ほっこりとまではいかなくても、少し暖かい感じがしましたね。不思議で結構好きなエピソードです。
ただ、BGMというか、SE(効果音)が怖いんですよね。
瑕疵 後編(少し怖い)
概要
取材班は里美さんのセミナー友達のBさんにインタビュー。「人生を良くするためのセミナー」という触れ込みで、様々なグッズやセミナー料で稼ぐいかがわしいものであったようだ。この中で、里美さんが当時付き合っていた男性に、度々暴力を振るわれていたという話が聞ける。里美さんが亡くなる直前に、このセミナーの代表者は詐欺罪で逮捕されるという事件が起こった。彼女は真剣にこのセミナーを信じていたので、かなりのショックを受けていたようである。
さらにBさんのツテで、当時の関係者のCさんに話を聞くことができた。Cさんはセミナーの教え自体は、当初は健全なもので、金儲けに走った頃から距離を置いていたと語る。初めは警戒していた彼も、酒を酌み交わせながら話を聞いているうちにうちに態度が軟化し、口が軽くなってくる。そして、暗示がなかなか効かない人を繋ぎ止めるため、周りの人間に責任転嫁し、それらを呪い殺すようなインチキ儀式を幹部が考案して実行していたことを語ってくれた。そして里美さんもその儀式に参加していたという証言も得る。
Cさんは、その儀式を行う適当な廃屋に、信者を送り迎えする役割も担っていたため、その場所に案内してもらうこととなる。投稿者の仁さんもこれまでの報告から、戸惑いながらも母の足跡を辿りたい気持ちから同行を長い出て、Cさんも快諾してくれた。
道中、仁さんはCさんに母の様子を根掘り葉掘り聞き出して、思い出を噛み締めるとともに、悩みを抱えていたという母にショックを受けているようである。Cさんが案内してくれたのは古びた廃校で、そこには信者が持ち込んだという、呪い殺したい相手にまつわる物品が山のように積まれ、そのままになっていた。
そして、仁さんは発見してしまう。そこに打ち捨てられていた「仮面ライダークウガ・ライジングパワーセット」の一部品「マイティアンクレット」を…。母は自分を必要としていなかったのか。むしろ邪魔にさえ思っていたのか。そして死んでしまえとさえ、思っていたのか。「マイティアンクレット」を愕然と見つめることしかできない彼であった。
ここで、Cさんから提供された、儀式を盗撮したという映像が紹介される。
教祖のような主催者らしき人物に捧げられた「仮面ライダークウガ・ライジングパワーセット」の一部品、「マイティアンクレット」。これを持ち込んだのは在りし日の里美さんである。仁さんの名前と呪いの言葉を叫びながら、別の依り代を狂ったようにハンマーで叩き割る里美さん。そしてその背後にはあのアパートに写り込んでいた不気味な男の姿が一瞬写り込んだのだった。
感想
一瞬写り込んだ男、少し怖いですね。はっきり映りすぎている気もしますが、映像がブレ具合が結構絶妙でドキッとします。ただ前編で写った姿との比較映像が出るのですが、全然似ていないというか、やっぱりポールハンガーにかかった上着にしか見えなくて、同じ幽霊という感じがしません。
それにしても仁さんが気の毒で、救いのない話でした。
尚、このエピソードでCさんの暗示にかかったため、飲めないビールがちょっと飲めた、「フリ」をする寒川ちゃんが拝めます。
感想まとめ
菊池監督に比べるとすっきりコンパクトにまとまっている感じがします。ただボリュームが少ないようにも思われ、「もう終わり?」感は否めません。とは言っても一般投稿に見所があるものが多かったため、満足感があり、物足りなさはありませんでした。要するに結構楽しめました。
一般投稿では、「タクシー」「停電」「かくれんぼ」が印象に残りました。
コメント
瑕疵 後編のあの男の霊見たとき!、半沢直樹かと思いましたw
倍返しだ!(笑)。