はじめに
「ほんとにあった!呪いのビデオ Ver.X:2」のレビューです。この卷では初期の通常版でもたまに登場していたプロデューサー・大橋孝史氏が大活躍(?)します。
続・砂嵐(怖くない)
概要
前回までの超超超ざっくりあらすじ
テレビ放送終了後の砂嵐に何かを見て失踪してしまった清水さん。彼とその映像を探していた取材班は彼と最後に一緒だった谷井さんを探し当てる。だが、谷井さんは交通事故で入院してしまい、集中治療室で意識を取り戻さずにいる。
本編
スタッフは谷井さんが入院している長野の病院に向かうものの、集中治療室で意識不明の谷井さんには面会することは叶わなかった。だが、付き添いに来ていた彼の家族(母親、妹)に話を聞くことができる。病状は未だ予断を許さない状況であること、長野の山奥での車の事故らしいことがわかる。彼の荷物に例のビデオテープらしき物もなく、また砂嵐の映像の件や清水さんのことも家族は何も知らなかった。
スタッフは警察からの情報で、この事故の第一発見者と現場に訪れ話を聞く。彼によると事故車には谷井さん1人しか乗っていなかったとのこと。だが、誰かが降車したように助手席のドアが開いていたそうだ。そして車が向かおうとしていた道の先には、小規模な墓地があると言う情報が得られた。この墓地には幽霊が出ると言う噂があると言う。何故この地に墓地が存在するのかは、地元の人たちもよくわからない、いわくつきの場所であるらしい。スタッフはその墓地に向かい、一晩定点カメラを設置し、撮影して見ることにした。
カメラは白い煙のような、靄のようなものが漂う有様を記録した。谷井さんはこの墓地に向かおうとしていたのか、清水さんは同行していたのであろうか。
墓地の由来を調べるスタッフであったが、関係各所に取材しても何故彼がこの墓を訪れようとしていたのかはわからない。スタッフは静岡に戻り、谷井さんの知人に話を聞いてまわり、当時の担任の岡村先生が退職後に実家のある長野に戻り、最近亡くなっていたことがわかった。そしてあの墓地に岡村先生のお墓があることが判明する。
感想
どんなおどろおどろしい朽ち果てた墓なのかと思ったら真新しい墓石もあり、花も備えられ、掃除も行き届いた普通の墓地でした。確かに映像に煙みたいなものが記録されており、不思議ですが怖くないです。
喧嘩(少し怖い)
概要
結婚式の二次会が終わりみんながはしゃいでいると、建物の外でメンバーがもめてガチの喧嘩になってしまっていた。喧嘩の原因になった男性の友人は、普段は温厚で喧嘩をするような人物ではなかったと言うのだが。彼の背中に人の顔が浮かび上がっている。その友人はその後事故に遭い、大怪我をして未だ入院中だそうである。
感想
酔っ払って徒党を組んでいるやつらって本当にうざいですよね。私も飲み会のあとは通行人とトラブルになるんじゃないかとちょっとヒヤヒヤすることも多いです。この怒り狂っている若者も、なにか失礼なことをされたんじゃないでしょうか(それにしても怒り過ぎ)。酔うと周りが見えなくなる人も多いので、少しは大目に見てあげましょう。
写り込んだ顔は、何か一点を凝視している感じで少し怖いです。
双子(怖くない)
概要
双子のミュージシャン・サスケ(大垣勝正・大垣隆正のフォークデュオ)が、ファンとともに花見した際の映像。弟の大垣隆正さんの背後の桜に猫のような姿が写り込んだ。隆正さんはその後、「ギラン・バレー症候群」という難病にかかってしまった。
感想
本当だ。猫耳がはっきりわかる。でも猫なのでそれほど怖くないです。
この双子ミュージシャン「サスケ」は実在していて、1979年にデビューしているようですね。残念ながら、弟の隆正さんは2013年に肺がんで亡くなってしまい、現在は兄の勝正さんがソロで活動しているようです。
それとは別に、現在は「サスケ」という若い同名のデュオも存在するのでややこしい。
エレベーター(少し怖い)
概要
投稿者はとあるビルの管理人。エレベーターが何かの不具合で止まってしまった時の監視カメラの映像に、白い人影のようなものが写ったという。この建物には事故や事件などのいわくは何もなかった。ビルの建設当時の施工会社の作業員にもインタビューしたが、建築中の事故もなかったという。強いて挙げれば、エレベーターの設置をする際に金属部品を溶接工場に発注したが、高温になるのでそこで事故が起こる可能性があるとのことであった。彼に紹介してもらった溶鉄工場の従業員に話を聞くと、溶鉱炉に落ちて死体も何もなくなってしまう事故が起こることはあるという話であった。
ここで映像が紹介される。エレベーターが止まり、慌てて管理人に電話する女性の様子が記録されている。すぐに停電してしまい画面は真っ黒に。しばらくして何事もなかったように電気が復活し、エレベーターは動き出す。女性の背後に白い人影のようなものが映り込む。それは頭の長い人の顔で、拡大すると目鼻立ちがはっきりとわかる。
感想
要するに事故も何にもなかったんじゃないすかね。溶鉱炉に落ちた人の話は、このエレベーターの部品の鉄を精製した製鉄所であるとは一言も言っていないし(笑)。この従業員もそのような事故に居合わせたわけではなく、そういうこともあるっていうお話のようです。だいたい「溶鉄工場」なんて言葉あるのか?普通、「製鉄工場」でしょ。そもそも施工会社の人は「溶接工場」って言ってたぞ。全然意味違うじゃん。
写り込んだ顔は頭部分が異常に長く、少し怖いかなっという程度です。拡大映像では目が動いている気もします。
東京湾(怖くない)
概要
潜水士をしている、プロデューサー・大橋孝史の友人が東京湾で奇妙な体験をしているという。その潜水士・北村さんの話を聞く。東京湾にそこかしこに浮かんでいるブイのようなもの(浮標)の管理・維持のため海に潜ると、貝が大量に付着したその浮標の部品のくぼみに不可解なものを見た、という話であった。
周辺の聞き込みをすると、船からの飛び込み自殺が多いとのこと。スタッフは問題の浮標の下に潜って調べて見ることにした。プロデューサー・大橋が自ら潜水服に身を包み、浮標下の海中にカメラを携えて潜る。50cmも視界のない濁った東京湾の水中、問題の浮標のくぼみ付近で彼は水中深くに引きずり込まれるような感覚を味わい、人の顔を見たという。
その後彼は体調を崩し、吐き気から胃の内容物を海に戻してしまう。
大橋の撮った映像を確認すると、浮標の例の箇所で人の顔らしきものが映り込む。
感想
綺麗な弧を描いて海に吐き出される、薄黄色の胃の内容物を拝むことができます(笑)。「気持ち悪い」と訴える大橋氏の訴えに、「も一回潜らないんすか」というスタッフ(多分菊竹氏)の非情な言葉にちょっと笑いがこみ上げます。「何か映るかもしれない」と勢い勇んで自ら潜って見たものの、大した収穫もなく、想像以上に海が汚くて疲れてシオシオになってへたれ混む大橋氏の姿が、このエピソードの見どころかもしれません。
映像は、海の生臭い匂い、使い古された潜水服のゴムの匂い、しょっぱくて汚い海の水の味などを想像させられ、濁った海中、びっしりと浮標に付着する大量の貝、ゴボゴボとうるさい吐いた息の音、それらが相まって無駄に臨場感にあふれており、見ているこっちまで気持ち悪くなってきました(笑)。
写り込んだ顔はそこに居たという存在感がなく、写真を合成した感じがして、怖くはありません。はっきりとは写っているんですけどね。
続・砂嵐(少し怖い)
概要
谷井さんが意識を取り戻した。初めは意識がほにゃほにゃしていた彼であったが、清水さんの件を切り出すと、しっかりと話してくれるようになる。
谷井さんによるとまず、清水さんがビデオを送ってきたそうである。その砂嵐のビデオには何も見えなかったが、後日清水さんがわざわざ持ってきたビデオには、人の顔のようなものが写っていたという。そしてその顔は担任の岡村先生の顔に見えたというではないか。当時、谷井さんと清水さんはちょっとした悪さで岡村先生に激しく叱責されたことがあり、「殺してやりたい」とまで思ってしまったそうである。彼らはたまたま近所の木の根元に落ちていた藁人形を拾い、怨嗟の念を込めてその人形を刺したりして呪ったというのだ。
この砂嵐映像を見た谷井さんと清水さんは、岡村先生を思い出し消息を尋ねて見ると、一年前に亡くなっていることがわかった。映像への恐怖と、幼い頃の話とはいえ呪ってしまった事への後ろめたさからか、先生のお墓にお参りに行こうという話になったのだそうだ。つまり清水さんは事故の直前まで谷井さんと一緒にいたのだ。
谷井さんによれば、墓地に向かう際にそのビデオテープを持参していたというので、事故後に回収された彼の荷物を調べるため、スタッフは谷井さんの実家の静岡に向かう。彼のカバンの中にはビデオテープは無かったが、妹さんから事故車を回収した業者を紹介してもらう。そして大破した事故車(シビック)を丹念に調べて、破損したビデオテープを発見することに成功する。修復したテープには何が写っているのであろうか。スタッフロールの後、映像が紹介される。
おことわり
このビデオカセットのこの後に収録されている砂嵐の映像は、谷井さんが事故に遭い
清水さんが失踪してしまうという事の原因になっている呪われた砂嵐の映像です。
ご覧になると呪われる可能性があります。
ただし当社は一切の責任を追いません。
砂嵐の映像であるが、映像の終盤近くになって一瞬だけ一面のグレー画像になる。そこには男性のような目鼻立ちがうっすらと浮かび上がっていた。
感想
リプレイで顔が出る瞬間まで、だんだん再生速度が遅くなる演出が少し怖いですね。顔自体は表情がわからないので落ち着いて見ればそんなに怖くないです。
エピソード全体の感想としては馬鹿丁寧な取材が少々冗長に感じました。ですが、ここまでやるかと感じるほど、非常に丁寧に取材しており、クライマックスで廃車体からテープを見つけ出すくだりは、「おおっ!」と思いましたね。また、取材先の人々が個人情報をペラペラ喋ってくれる様には時代を感じさせますね。大体は病院や警察前で演出補が「ダメでした」っていうパターンが多いですからね。
感想まとめ
この2巻までで、九重勇次朗氏の作品は終わります。感想としては非常に丁寧な取材、なにしろ静岡と長野を何度も行ったり来たりですからね。また、登場人物に喋らせて話を説明し、テロップやナレーションは最小限。これはドキュメンタリーらしい臨場感がでていると思います。その反面、映像に集中していないと話が理解しにくく、時間ばかりかかって冗長である印象も感じます。
また、この巻のナレーションは前巻の宮川宏司氏から高橋眞三樹氏に変更されており、こちらはなかなか落ち着いて良いと思いましたね。どっかで聞いたことがある声だと思ったら、ほん呪1、2のナレーションを担当していた方でした。舞台俳優さんなのですね。
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