はじめに
「ほんとにあった!呪いのビデオ66」のレビューです。今回は川居さんが同僚の演出補を救うため、泥だらけの沼に入ります(笑)。また、タイトルがちょっとした伏線(?)になっています。
ぎょうさん(けっこう怖い)
概要
雑誌編集者である投稿者の女性が、インターネットで募集した女性2人と供に心霊スポット巡りを敢行。パワースポットである巨石を、よりにもよって夜中に訪れる。その巨石のそばにある、心霊スポットのトンネルも訪れ、超物好きにもその中に入ってゆく。
立派なポータルを備えるこのトンネルだが、しばらくすると手掘りになってしまい、不気味な雰囲気を醸し出す。時折滴り落ちる水滴におっかなびっくりの投稿者一行だが、そのうちの1人が何か物音が聞こえると訴え出す。見渡しても漆黒の闇に懐中電灯の光が、弱々しく辺りを照らすだけである。だが撮影している投稿者は、2人の背後に何か大きいものが存在していることに気がつく。ライトが照らす範囲は狭く、最初は何が写っているかわからない。だが、大きな瞳が映し出された瞬間、それはトンネルの断面いっぱいに広がった、とてつもなく巨大な、人の顔であることが判明する。撮影者の鋭い悲鳴で画面が乱れ、映像が終わる。
このパワースポット一帯では「ぎょうさん」という、顔だけの妖怪が言い伝えられている。その妖怪は死期が近い人の前に現れるとのことである。彼女たち3人の中に死期が近づいている者がいるとでも、言うのであろうか…。
感想
僕はこれ結構怖いと思うし、好きな作品です。でも他の方のレビューを見るとなんかちょっと反応薄いんですよね。なんででしょう?、同じコピーライツファクトリー制作の「デスフォレスト 恐怖の森」に出てくる「ヨシエ」さんにどことなく似ているからでしょうか。
歯をむき出しているところなんか、結構通じるものがありますよね。
こちらの顔は冷静に見ると、彫りやシワが強調されていて、なんか写真か絵のようにも感じます。全く動かないので、下手するとリアルな漫画にも見えてしまい、恐怖感が薄まってしまうのでしょうかね。ただ僕はそれが異質感が極まって、かえってかなり怖く感じます。
ここはおそらく東京都西多摩郡檜原村にあるパワースポット、「神戸岩(かのといわ)」で、トンネルは「神戸隧道」だと思われます。心霊スポットとしてよく紹介されていますね。投稿者たちの1人はひらひらのスカート姿ですが、そんな格好で行くところではないと思います(結構険しいです)。
声(少し怖い)
概要
若い男女3人が投稿者の部屋で飲み会。すると隣の部屋から女の喘ぎ声が聞こえてくる。実は以前より隣の部屋から声が聞こえていたと言うが、投稿者は「壁が薄いのだろう」くらいにしか思っていなかった。友人の男性はこの声に興味を示し、酒も入っていたせいか、隣の部屋を覗いてみようなどと言い出す。投稿者も最初は諫めていたものの、やはり興味が湧いたらしく、自撮り棒とスマホでベランダ越しにその部屋を撮影してしまう。だがそこには玄関で首を吊ったようなシルエットがぶら下がっていた。自撮り棒なので投稿者は気がつかない。喘ぎ声が大きくなると、手前の窓に髪の長い人の顔が写っている。
回収したスマホの映像を見て、実際の自殺現場かもしれないと思った投稿者はベランダを乗り越え様子を見に行ったそうだが、驚いたことに隣室は空き部屋だった。大家に問い合わせるが、その部屋は2年も空き部屋で、特に事件や事故は起こっていないというのだが。スタッフが不動産屋に取材しても同じ答えであった。その後、投稿者の中学高時代の同級生が、2ヶ月ほど前に首吊り自殺していることが判明する。この男性は晩年髪の毛がヘアゴムで結べるほど長髪だった言うのだが。
感想
ベランダのエアコンの室外機の音が臨場感があって良いですね。ぶら下がった人影もリアルで少し怖いです。ただ、窓に映る顔はなぜかあまり怖くありません。
部屋に何の謂れも何も見つからないからと行って、中学時代の同級生の死と結びつけるのはちょっと強引だと感じました。というか、ぶら下がっていた人物も窓に映った顔も一見して女性に見えましたよ。
話は変わりますが、一緒に飲んでいた女性のニットのワンピース(?)姿があざといな、と思ったのは私だけではないでしょう(下にショーパン履いているのだと思いますが)。
六十六 前編(少し怖い)
概要
映像制作会社に勤める投稿者が、職場の先輩の映像を送ってくる。その先輩の男性、城崎さんが自宅で家族に自分の誕生日を祝ってくれている様子を撮影した映像であるが、彼の顔にノイズが走ったり、ケーキのろうそくの灯りに人の顔が写り込んでいる。そして城崎さんは何の前触れもなく失踪してしまったというのである。
彼の妻である愛美さんに取材すると、失踪に心当たりはまったくなく、白崎さんはお経の声や人の気配がするなどと語っていたことがわかる。実は以前勤めていた映像制作会社「シネワイヅ」が倒産しており、社長は自殺。倒産直前に城崎さんと供に離反して集団退社した元同僚達も失踪や事故死など短い間に5人が何らかの不幸に見舞われていた。
会社に出入りしていたフリーのディレクター大藪さんに話を聞くと、シネワイヅ関係者の間でささやかれていた、ある呪われたDVDの企画があったことが判明する。それは社員の知人の若者達が沼の辺りでキャンプをしていた映像に心霊現象が写ったもので、社長が興味を抱いて企画化、そのロケハンでも心霊現象が発生したと言う話である。この沼の辺りでは巡礼僧が殺された言い伝えがあり、なんとこのシネワイヅの社長が自殺したのもこの沼であった。スタッフはこの話によく似た「六部殺し」と言う伝承が各地で語り継がれていることを発見する。
ここで映像が紹介される。
城崎さんの誕生日を「コージーコーナー」のバースデーケーキで祝うささやかなパーティー。ケーキを持ち上げてカメラに披露する城崎さんの顔だけに激しいノイズが走る。ケーキにロウソクを立て、部屋の明かりを消してライターに着火すると、炎に照らされた彼の顔の後ろに、頭を丸めた4人の男がじっと見つめている。
感想
端正な顔立ちの男性が4人、城崎さんをじっと見つめています。ライターとろうそくの炎にちゃんと照らされてリアルで存在感があり、しかも全員イケメンです(笑)。巡礼僧と言う事前の刷り込みがあったためか、お坊さんに見えなくもないですね。
けど、さほど怖くはありません。
残留物(怖くない)
概要
自主映画のロケハンで訪れた廃ホテル。とある部屋でホームレスか何かの生活の痕跡を見つける一行だが、ロープにかけた衣服に、その衣服を纏ったような腕と髪の毛が見える。この廃ホテルでは女性ホームレスの遺体が発見されたことがあるそうである。
感想
ピンクのカーディガンか何かが逆さにかかっているのですが、その袖から腕が、襟からは髪の毛がだらんと垂れ下がっています。ちょっとわかりにくく、怖くはありません。
シリーズ・監視カメラ パチンコ(怖くない)
概要
廃業して廃墟化したパチンコ店。侵入者防止のために動体検知付きの警報装置と監視カメラが設置してあった。だが、動体検知装置は誤作動が多く、警備員が駆けつけても誰も侵入した形跡がないことが度々あったと言う。今回の映像も警報に警備員が駆けつけたが、誰もいなかった。だが映像には警備員の後を追う女の姿、それが消えたかと思うと、今度は画面右下に首のない赤ん坊を抱いた姿がカメラに写り込んだ。
かつて店の前の国道で車に乗った家族が事故で死傷し、血だらけの若い女性が店に助けを求めてきたことがあったと言う。
感想
雰囲気はありますが、薄くてわかりにくく、怖くありません。
樹海(少し怖い)
概要
富士の裾野に広がる青木ヶ原樹海。夜にここを訪れ、レポーター風にカメラに解説する若い女性。投稿者は動画投稿サイトに投稿する目的で撮影したと言う。
しばらくするとこのレポーター役の女性は何かに蹴躓いたように転んでしまう。その際の映像、画面右下に地面から頭を出した女の頭をカメラは捉えてしまう。その目がぎょろぎょろと左右に動く。
最近樹海には何もないところで転ばされる、「あゆみさん」という怪異の存在がささやかれているそうである。
感想
ぎょろぎょろと左右に動く目が異様に大きく、ちょっと気持ち悪いですね。ですが写りが小さくて、一瞬しか映らないので恐怖度は低めです。
この目の動き、「ほんとにあった!呪いのビデオ63:証明写真」に出てきたあの女の目の動きに似ている気がします。
六十六 後編(少し怖い)
概要
倒産したシネワイヅが入居していたビルのオーナーに連絡を取ることができ、倒産前の会社の資料が残されていることがわかった。15〜6個の段ボール箱の書類やテーブが残されており、オーナーはそれを持ち帰ることに同意してくれた。
スタッフはこれらの資料から、問題の企画書と沼でのキャンプの映像を発見する。さらに問題の沼の所在地が判明し、その沼にも六部殺しに類似した伝承が存在していることもわかった。取材班は他に手がかりもないため、その沼を直接訪れることになる。その沼の周辺に定点カメラを設置し、近くで見張ることにしたのだ。一晩中鬱蒼とした藪の中にある沼を観察する取材班。途中連絡用のトランシーバーが混信したり、演出補・今野が何者かに魅入られたように沼の中に入っていってしまう珍事が発生するものの、これといった心霊現象は発生しなかった。今野は39度越えの熱でしばらく休養が必要になる。
その後製作委員会には、匿名の告発文が届いた。シネワイヅ社長の自殺の原因は、城崎さんを含む社員の集団退職による裏切りであるとの内容であった。目をかけていた社員の扇動によるこの行為に、社長は強い恨みを抱いていたという。殺された六部の恨みの念が社長をこの地で自殺させ、その対象に不幸をもたらしたとでも、言うのだろうか。
ここで、問題の企画の発端となった、シネワイヅに持ち込まれたであろう、キャンプの映像が紹介される。
若者達が例の沼でキャンプしている様子。酒が入り、周りに誰もいないことからか、傍若無人のゲヒャゲヒャ馬鹿騒ぎ。そのうち、メンバーの1人が黒っぽい何かを見たと訴えるが、カメラには何も映らない。それをバカにするように一番ガラの悪い別の男が沼に放尿する。小便が足にかかってしまったのか、聞くに耐えない悪態をつく。しばらくして2度目の放尿をしたとき、編笠を被った何人もの修行僧らしき男たちが、沼から現れる。その数5〜6人。撮影者の悲鳴が周りにこだまし、映像が乱れて終わる。
感想
沼というよりでかい水たまりですねこれは。雨不足なら簡単に干上がってしまうと思います。なんだか薄汚く、泥だらけでこんなところでキャンプなんて物好きにもほどがあります。よく聞くと混信の音声がお経のような感じもします。最大の見所は今野が沼に入ってしまうシーンですが、助けに入った川居が胸の近くまである防水ズボン(ウェーダーというらしい)、あらかじめ着込んでいるのがかなり怪しいんですよね(笑)。
映像はそれなりに不気味なものに仕上がっています。まさか何人もわらわら出てくると思わないのでインパクトはあります。「すごいなこの村、六部何人殺してるんだよ」、と思いました。
感想まとめ
何だか内容が薄い気がします。
エピソードの数も「六十六」を1つにまとめると全部で6エピソードといつもより少ないです。
ん?
六部殺しにかけたのか?
そういえば今巻のタイトルは「ほんとにあった!呪いのビデオ66」。
発売年が2016年。
なるほど。
これで、発売月日が6月6日だったら完璧だったのですが…
あと興味深かったのは例の企画書。
DVD企画 裏史実・六部殺し(仮) 〜呪われた沼を探して〜
企画のねらい
・ホラードキュメンタリーX歴史
・史実に基づいた恐怖!!
とか、生々しくてリアルです。っていうか「ほんとにあった!呪いのビデオ」もこんな企画書から作ってるんですよね(笑)。たぶん。
一般投稿で印象に残ったのは「ぎょうさん」ですね。菊池作品では一番好きです。
コメント
『ぎょうさん』は私も好きです。あと『六十六 後編』の映像も。
菊池作品はいろんな意味で“やりすぎ”なことが多いですが、あれだけの数(「その数5~6人」とされていますが、企画上6人と見ないと意味をなさないでしょうね…)の僧侶の霊が、ぬうーっと現れてくると壮観で、おおーっとなります。
そして『樹海』の目ギョロギョロは、どこで味をしめたのか知りませんが、同じ手を使い過ぎです(63巻『上空』もそうでしたね)。
>企画上6人と見ないと意味をなさないでしょうね…
そうですね、もっとちゃんと見ておけばよかった。DVDを今朝返却してしまいました(笑)。6人までは数えたんですけど、薄くて数え間違いもあるだろうと気にしていませんでした。これだけ「6」にこだわっているのだから、巡礼僧も6人の可能性大ですね。そういえば犠牲者が5人なのですが、今野が危うく6人目になるところだったという演出ですかね。
「樹海」のギョロギョロは、そういう頭を作ったのかな?
目の動きが機械的な気もしてきました。
常にほん呪の撮影場所を探していますが、なかなかわかりませんので、よく調べているなと思います。
66で登場する沼は、三浦半島葉山にある大池ではないかと思っています。南側から登っていく道をストリートビューで見ると、沼に向かうスタッフが車を停めた場所とよく似ている所があります。東京VORへと続く道です。
キハ20さん情報ありがとうございます!
ご指摘の場所はこのあたりですかね。
https://goo.gl/maps/1QcSBtSCDY3hFeef9
東京VORを探すの手間取りました(笑)ただ肝心の大池がどこなのかよくわかりません。今日はもう遅いので明日以降調べるつもりです。
大池を訪れた他の方のブログなんかも見たところ、写真を見る限りこの池の可能性は高いと感じました。こんなに海が近いところとは驚きです。
それにしてもよく見つけましたね。すごいです!
関東地方の沼とアナウンスしていたので、沼とか池で検索していたら、たまたまこの沼が出てきて、風景等がよく似ていたので調べてみたのです。本編中この沼に向かう映像があったので、ストリートビューでみていたら、スタッフが車を停めた所に似ている場所を見つけたのでそうかなと思いました。車は、二股に分かれる道の右に停めましたが、スタッフは直進していました。この道を見てみると、先のほうで左に曲がっていますが、左折し直進すると東京VORです。沼は、その途中を右折し(地図上だと北の方)へ進み、右手方向にあるようです。この道は、ハイキングコースのようになっているようで、そのまま北上すると逗子方面に抜けられます。貼り付けてある地図のとおりです。ここは、地形上窪地の扱いになっているようなので、地図上では池になっていないようです。名は峯山大池。
ようやく何となくわかりました。東京VORへの道がグニュっとしているカーブの終端を右へ行くのですね。ストリートビューでも何となく道があるようです。木々が鬱蒼としていて航空写真では池が確認できないのが残念。スタッフが車を止めた二股も確認できました。こんなところまでよくGoogleカー入って行きましたね(笑)。
それにしても「関東地方の沼か池」でここを特定するのはやっぱりすごいです。
行ったことがないので、右折の場所は不明です。車を停めたところは間違いないですよね。ほん呪スッタフはよくここを見つけたなという感じ。それにしても、下記の疑問があります。
1 さほど有名でもなく、地図にもない山奥のここでなぜ夜中にキャンプなどしていたのか。地元民としか考えられない。海でやればいいのに。
2 上記と同じく、なぜこんな所で自殺したのか。絶対溺死ではない。(水量がないので溺れようがない)服毒自殺か刃物等を使用したのだろう。思い入れでもあったのか。
3 この周辺で六部殺しの伝承は調べた限りではない。
4 沼に侵入したスタッフをなぜか女性の川居さんが救助。しかもズボンは防水仕様。不思議だ。
こんな地図を見つけました。
http://hayama-npo.or.jp/sansaku-map/map-pdf/mineyama1802.pdf
この地図によると、あの辺で左折するようなのです。
水深1mだそうですね。季節によっては枯れてしまうこともあるようです。ここで溺死するのはちょっと無理でしょう。
六部殺しの話も無いようですが、底なし沼と呼ばれ、地元の人々は恐れて近寄らなかったという記述を見つけました。
http://www.hunterslog.net/dragonology/DS2/14301e.html
おそらくフェイクなんでしょうけど、なかなか良い雰囲気の場所を見つけたものです。